【山郷駅】 (鳥取県 八頭郡 智頭町)
【箱根の山は天下の険】と、小学校唱歌にまで歌われた【箱根峠】に勝るとも劣らぬ険しい峠が、因幡・美作の国境の【志戸坂峠】である。

 江戸時代、鳥取藩の公馬が逃げ出し、志戸坂峠まで来たが、余りの険しさに恐れをなして、引き返したという。馬でさえも引き返した急坂は、【駒帰(こまがえり)】の地名になった。
 この志戸坂峠は、江戸時代だけでなく、近代まで、つづら折れの険しい坂道が延々と続く、交通の難所であった。

 しかし、現在では中国山脈を貫通する、新しい【志戸坂トンネル】が出来ており、アッという間に通り抜けることができる。智頭線であれば、なおさらである。

 その志戸坂峠の麓、鳥取県側の駅が【山郷駅】である。

中原トンネル手前の【山郷駅】

 鳥取県智頭町山郷(やまさと)は、見渡すかぎり、緑の豊かな山並みが続き、【名は態をあらわす】ように、名実ともに、【山の郷】である。【日本一の木材産地】にふさわしく、手入れの行き届いた杉や絵の美林が続いている。

 江戸時代、因幡街道の宿場町であった山郷には、藩主が休む御屋敷、蔵屋敷、馬屋敷、さらには番所、制札場などが置かれていた。
 このように山郷は、近世の歴史と街道を探索するのに、面白い地域である。

 昔の志戸坂峠の山道は危険なために、現在は自動車進入禁止になり、通行出来ないようである。恐らく峠の長い歴史と共に、静かに眠り続けるのだろう。

 このページの【写真】および【近隣の紹介文】(抜粋)は、上郡町の【上郡〜智頭沿線を愛する会】(代表 有田明義氏)が、発行した冊子【ふる里の軌道】”智頭急行沿線探訪” の中から、有田氏の承諾を得て、使用させていただきました。
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